Presented by 日本食糧新聞社

生協特集

区切り線

生協ってなんだ 多面性を理解する

国内に2000万人もの組合員がいても、生協という組織がわかる人間は少ない。各生協の年間供給高(売上高)をあわせると3兆円を超えていて、食品だけの売り上げでみれば、イオン、セブン&アイにも匹敵する。しかし、その去就が両者のようにマスメディアで騒がれることは少ないのは、生協が一つの組織ではないためだ。個々の生協は独自に生まれ成長してきた組織で、生協という呼び名は「株式会社」「社団法人」といった法人の分類名と理解したほうが早い。これが合併、事業連合の設立、日本生協連とのPB商品の共同化など連携の度合いを強めてきているのが1990年以降の動きだ。
 また、生協をわかりにくくしているもう一つの理由としては、その多面性にある。食品衛生法の改正に向けて市民運動をやっているかと思えば、各地域で他の小売業と競争し、遠く離れた農業者と連携している。事業と運動という両輪があるからこそ生協であり、事業を持続的に発展させながら、消費者運動を展開している。
 「生協ってなんだ」は日本食糧新聞2013年7月24日付に掲載した「生協特集2013」をベースにして、関連する過去の記事とリンクしてある。生協特集で日本生協連、ユーコープ、コープみらいを中心に、パルシステム、コープふくしま、コープあいづなどの動きをまとめた。これらの動きの意味、経緯などをリンクしてある。

経営体質を強靱化 組織合同で目指すコープみらい、ユーコープ

首都圏の6生協が組織合同(合併)で3月21日に二つの生協になった。コープとうきょう、さいたまコープ、ちばコープが合併してコープみらいになり、コープかながわ、コープしずおか、市民生協やまなしはユーコープとなった。卸売業としての機能を持つ日本生活協同組合連合会と連携して、経営体質を強化していく考えは同じだが、二つの生協の歴史、立場などから対応に温度差がある。

コープみらいは、いばらきコープ、とちぎコープ、コープぐんま、コープながの、コープにいがたと同様にコープネット事業連合に加盟する。コープみらいの前身の一つであるコープとうきょうが1999年にコープネットに参加する条件として、日本生協連を巻き込んでPB商品、物流などの共同化を提案し、各生協のPB商品は日本生協連と統合し、物流施設なども共有化してきた。コープみらいとなっても多くの経営資源を依存しているコープネット事業連合からは脱けられない。

コープネット事業連合と一体化していた中で、あえて3生協が合併したのは、少数意見を大切にする民主的な組織の弊害の一つである意思決定の遅さの改善だ。コープネットである程度決めた投資計画なども3生協の理事会が修正し、それをもう一度、コープネットの理事会が承認しなければならなかったが、コープみらいになれば時間が大幅に削減できるのだ。

コープみらいの役員は約30人で、3生協時代の80人に比べて大幅に減らした。この経営コストも削減につながる。

コープネットの役員も兼務していてコープネットのコスト削減にもつながる。コープネットの理事会のメンバーは今までの事業連合の例から、コープみらいの理事が70%を占めても良いのだが、半分以下にした。コープみらいの好き勝手にはできない仕組みだ。

コープみらいのこれからやろうとしていることは、コープネットの他の生協のノウハウにもなっていく。


 

●事業連合の限界

現在は生協としてのユーコープと、事業連合ユーコープが存在する。事業連合としてのユーコープは来年3月までに解散する予定だが、事業連合は合併した3生協以外にも商品を提供する業務を続けていて、今後、どのようにしていくかを生協を所管する厚生労働省と調整中だ。

合併した3生協はコープネット以上にもともと人材交流、店舗運営のノウハウの共有化をしていた。コープネットの動きをみて日本生協連のコープ商品と共同化などを進めているが、物流施設の共同化はまだ進んでいない。

合併で事業と組合員の意識の共有化を図る。3生協の組合員が新しいサービス、商品の要望を示しても個々の生協の理事会で承認し、それを事業連合のユーコープが立案し、実行体制を作りあげていく。コープみらいとほぼ同じような悩みだが、事業連合をなくすことで組合員への要望、市場の変化に迅速に対応できるようにしたのだ。

コープみらいもユーコープも合併したが、片方は事業連合を存続したままでの合併、残りは事業連合から合併への移行と異なる。だが、両生協とも枠組みができた段階で、合併の効果が見えてくるのはまだ時間がかかる。

07年度にはユーコープ事業連合とコープネット事業連合の合併も検討されていたが、08年の中国製ギョウザ中毒事件で安全・品質管理を優先し、合併はなくなってしまった。生協法の改正もあって、両方とも新しい道を歩み始めたのだ。理事を交換し、日本生協連との商品開発で同じテーブルについているため、連帯は続いている。

用語集へのリンクバナー

ページの先頭へ戻る