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進化するサービス 商品の利用拡大へ

 良い商品をつくっていれば売れる時代から、良い商品をつくって適切な方法で提供する時代になっている。各地の生協の新たな動きを報告する。

コープ商品の人気投票ACB48 新たな使い方提案も コープあいち

ACB48選挙結果

生協商品の新たな使い方提案も PB活性化に拍車期待

 生協の商品をもっと使ってほしい--。コープあいちは2013年8月にコープ商品を中心とした商品の人気投票ACB48(コープあいち・コープ商品・ベスト48)を実施、その結果を9月に公表した。愛知県産品である「はぐくみ自慢」のうち、長年にわたる利用実績がある「せいきょう牛乳(超高温殺菌/緑)1リットル 美濃・三河」がトップとなり、コープあいちが参加する東海コープ事業連合が開発した「味噌煮込みうどん」が3位につけた。単純な人気投票と異なり、これらの商品を使った感想、使い方なども組合員から寄せられ、コープ商品や東海コープ事業連合のPBの活性化につながっていく。
 2012年に行われた全国の生協組合員の意識調査では、他のスーパーとの競合で生協は全商品分類で負けていることが分かり、コープあいちはあらためて生協の価値、商品の価値を知らせていくべきと判断。組合員が「生協の商品で家族や友人と楽しい時間が持てて話がはずむような『コト情報』を中心とした話題づくり」が大切として、「ひろがるつながる食フェスタ」を開催してきた。食フェスタではコープあいちの各拠点などで開催、オタフクソースによる広島焼きの実演、明治ケンコーハムはあらびきポークウインナーを使った新しいメニューの提案など、組合員にさまざまな情報を提供してきた。
 ACB48総選挙は食フェスタの一環。コープあいちが利用状況などであらかじめ選んだ48品を組合員が投票。組合員向けの機関誌、店舗、インターネットなどを通して、8420票の投票があり、そのうち宅配の利用者から寄せられた投票結果のベスト10を公表した。併せて寄せられた商品のおすすめポイントは、宅配の注文に使う商品案内や、店頭のPOPなどに使われた。例えば「骨抜きサバ三枚おろし」では、焼き魚にしたときの高評価に加えて、「中国風甘酢炒め」など新たなメニューの実際の調理方法が示されている。
 総選挙を含めた食フェスタの実施は生協独自の商品の売上げ増につながっている。「だしパック」は「カレーやシチューに入れる」「お好み焼きの粉を溶く時に使う」などのコメントが寄せられた結果、6倍の売上げになり、「あらびきウインナー」でも2倍になった時期もある。

新たな需要拡大 「これいいね!総選挙!!」 コープ九州事業連合

CO・OPエキストラバージンオリーブオイル

コープ九州事業連合の総選挙結果(上位10まで抜粋)

 九州・沖縄の8県9生協が参加するコープ九州事業連合は2013年10月に宅配事業の商品案内で「これいいね!総選挙!!」と題して、コープ商品人気投票を実施、12年に続く2回目の実施。12年は九州ならではの商品「CO・OPちゃんぽん(具付き)」などが選ばれたが、殿堂入りしていて選挙の候補から外れた。13年の1位は「CO・OPエキストラバージンオリーブオイル」で、食文化が異なる各県を総合するとオリーブオイルがトップとなるなど意外な結果になった。
 この選挙は12年10月に第1回目を実施、好評だったことから2回目も開催となった。九州の生協の組合員が人気のコープ商品の中から、特にお気に入りの商品を三つ選んで投票してする企画。上位30位までを決める。コープあいちと同じように商品の使い方、意見などを書き込んでもらった。
 1位に選ばれたCO・OPエキストラバージンオリーブオイルについて組合員からは、冷や奴にかける、味噌汁に一滴たらす、バターやファットスプレッド代わりにパンに塗るなどプロが思いつかないような使い方が示されている。
 コープ九州は商品案内などで組合員の意見を載せて、コープ商品の使い方を提案してきた。また、総選挙の結果だけでなく、組合員から寄せられた意見の一部を日本生活協同組合連合会、コープ商品のメーカーにも示して、さらに効果的な販売促進方法の構築を目指していく。
 12年に選ばれた30品目のうち4位までに入ったCO・OP料理用白だし、CO・OPちゃんぽん(具付)、CO・OPあわせみそマイルド、CO・OP米麦あわせみそは殿堂入りして、13年の選挙から外れた。もはや定番商品になっている。

デリカゾーンを設置 競合店を意識 コープみらい・鎌ケ谷店

5月にリニューアルオープンしたコープ鎌ヶ谷店

5月にリニューアルオープンしたコープ鎌ヶ谷店 (写真提供=コープみらい)

平台で展開する「おかずバイキング」

平台で展開する「おかずバイキング」

POPで食べ方も提案する

POPで食べ方も提案する

 ちばコープ、さいたまコープ、コープとうきょうの3生協が合併して、千葉県、埼玉県、東京都を事業エリアとしているコープみらいは5月22日、千葉県の  コープ鎌ケ谷店をリニューアルオープンした。
コープみらいが掲げる「おいしさ」「即食」「簡便」の考え方を具体化した店舗だ。コープみらいにとっても500坪未満の店舗での新たなモデルとして位置付ける。
コープ鎌ケ谷店はちばコープが1997年に開店、駅前という好立地だったが、より住宅街に近い地域にある競合店を意識して、コンセプトを変えてのリニューアルだ。
 ちばコープは93年から日本生活協同組合連合会の提案に沿って、大型店を開店してきた。その一環としてコープ鎌ケ谷店をオープンした。もともとちばコープは宅配事業で強みを発揮していたが、店舗展開することで他の小売業と競合が激しくなった。
 コープみらいとなって採算のとれない店舗は閉鎖する動きを強めてきたが、コープ鎌ヶ谷店を新たなモデル店舗として改装して対応した。
 今回のリニューアルでは、「おいしさ」「即食」「簡便」をテーマに、水産・畜産、惣菜売場における「こだわり商品」「簡便商品の販売」を強化。ベーカリー売場も直営に切り替えた。
 惣菜コーナーを中心とした「デリカゾーン」を新たに設け、おかずを好きな量だけ選んで購入できる「おかずバイキング」を開始。コープみらいは「おかずバイキング」を600坪以上の店舗で実践していたが、初めて500坪未満の店で展開。この結果を評価したうえで、さらに他の店舗でも広げていく。

デリカゾーンを設置 競合店を意識 コープみらい・鎌ケ谷店

1000アイテム積載、1台で日販8万円を売り上げる「カケル」

1000アイテム積載、1台で日販8万円を売り上げる「カケル」(写真提供=コープさっぽろ)

 北海道全域で活動するコープさっぽろは約70台の車両を駆使し、移動販売「おまかせ便カケル」で買い物弱者を支援する。コープさっぽろは1990年代末に経営が厳しくなったが、組合員から有形無形の支援を受けてV字回復。組合員の支援への恩返しの一環として2010年に始めた移動販売を継続していくために損益分岐点を超え続ける事業にしなければならない。その結果、販売チャネルとして店舗、宅配、配食に次ぐ事業に成長してきた。
 コープさっぽろは半径500m圏内に店舗がない地域を買い物弱者が発生しやすいとして対応を狙った。「カケル」の仕組みは他の生協の移動販売と同様に各店舗を基地として、車で1時間程度(約40~50km)の圏内を、地域によって頻度が異なるが、週1回から3回のペースで回る。コープさっぽろも週5回、弁当などを届ける配食事業を行っていて、配食事業は他の生協と同様に宅配事業の拠点を使っているため、宅配事業の進化形だが、「カケル」は商品供給を週1回行う宅配事業に近いが、商品調達、販売管理は店舗と同じ仕組みで、新しい店舗という位置付けになる。
 「カケル」は2tトラックに1000アイテムの商品を積載、売れ筋と死に筋の商品、組合員ごとの購入履歴をID-POSで分析、平均して1日1台当たり8万円の供給高を上げる。店舗と同様に生鮮3品プラス惣菜が売れ筋だが、高齢者の利用が多いので、魚介類を充実させる。また、組合員から温かい惣菜が欲しいという要望があり、保温機を導入するなど次々と改善してきた。基地となる店舗と売れ筋が異なるので細かいデータ分析とマーチャンダイジングが必須だ。
 コープさっぽろは販売チャネル別の考え方として(1)高い頻度で来店できる組合員は店舗事業(2)店舗から遠い、多忙な組合員などは宅配事業(3)家庭での調理の頻度が低い組合員には配食事業としてきたが、「商品を実際に見たい」「宅配の注文に不慣れ」だが、「調理の頻度が高い」組合員には移動販売、と新たな事業と位置付ける。実際の組合員の購買行動は明確には分かれていないため、移動販売で他の販売チャネルの利用拡大につながる可能性が高い。「カケル」は採算を確保しながら、まず車両を100台に増やす。
 コープさっぽろの試算で全道260万世帯の中で、40万世帯の買い物弱者がいると考えられる市町村で、100台の車両があればコープさっぽろの店舗がある地域で「カケル」が展開できるという。そのカバー率は40万世帯の約7割に及ぶ。