Presented by 日本食糧新聞社

生協特集

区切り線

商品力を高める 店舗赤字の解消に向けて ユーコープ、コープみらい

充実してきたカットサラダの売場充実してきたカットサラダの売場
野菜売場は狭くしたが棚を増やして扱い量を変えない野菜売場は狭くしたが
棚を増やして扱い量を変えない

各地の生協の店舗事業は赤字が多い。他の小売業との競争激化、新たな業態の登場など原因は多岐にわたっているが、コープみらい、ユーコープも合併で意志決定の速度を速めながら、商品力強化などで対策を打ち、店舗事業の改善を狙う。

各地の生協の店舗事業は厳しい状態だが、個別配送(個配)・共同購入の宅配事業の黒字分が補っている構図だ。

ユーコープの前身の一つであるコープかながわは、かつてコープこうべと並び称されるほど有力な生協だったが、1994年から店舗は赤字続きとなっている。80年代には約50坪のミニ店舗が中心で、品質の高い商品を扱うことで売上げを伸ばし、生協の店舗事業のビジネスモデルになっていた。90年代には力をつけてきた県内の大手小売業の大型店との競合が始まり、優位を保てなくなっていた。コープかながわも大型店などで対抗し、個店ベースでは黒字店があっても全体では赤字のままだった。また最近は県内の小売業だけでなく、大手小売業、地域スーパーの他県への進出で競合は激しくなるばかりだ。

ユーコープの担当者は「販売管理費が高いことが大きい」という。売上げが伸びれば販売管理費の比率は下がるが、売上げが伸びない中で26%と他の小売業に比べて高い。販売管理費は物件費と人件費で構成されるが、人件費の占める割合が大きいという。解決策として他の小売業並みにパート職員の比率を高め、店舗の青果担当など部門別で責任ある立場への登用も検討中だ。職員に退職を促すことは最後の方法なので、夜間の店舗のマネージャーなどへの配置転換、定年による自然減などを待つという。

そのほか、店舗までの物流システムの改革によるコスト削減も、店舗のレイアウト、品揃えの方法なども加味しなければならないため、検討中だ。

生鮮や惣菜に力を入れていくのはもともと実施していたので、他の小売業に負けない価格訴求の商品や、価値訴求できる商品で対応する。特に青果物はコープかながわの時代から高い評価を得ていて、組合員に納得できるような価格、質で転換していく。

◆コープみらい 「惣菜」で勝負かける

コープみらいは東京、千葉、埼玉で赤字の原因が異なる。前身であるコープとうきょうは黒字を維持していたが、東京都内の店舗の12年度は赤字になった。この原因は23区内では大手小売業のミニSMの出店、東京の多摩地域、埼玉、千葉では大手小売業との競争激化という。

日本生活協同組合連合会が提唱している、生鮮3品プラス惣菜に力を入れて対抗していく。

惣菜は店内調理を増やし、売場を広げる。その分、生鮮の売場面積は減るが、棚を増やすことで扱い品目数、量を確保する。各店舗ごとに競合店を調べ、負けない価格帯を実現する。

加工品であるコープ商品も日本生協連はコープ商品の見直しを随時行っているが、その路線にのっとって価格訴求できる商品と、価値訴求商品を品揃えしていく。日本生協連の商品開発の重要性が増してきている。

・お役に立ちます“総菜コンシェルジュ”「ミアクチーナ湘南辻堂駅前店」


カレーバーでお客さまにサービスする松本綾さんカレーバーでお客さまにサービスする松本綾さん

カレーバーでお客さまの注文に応えて容器に盛り付け。ただの販売員ではない。ユーコープが6月にオープンしたミアクチーナ湘南辻堂駅前店で惣菜の案内係(コンシェルジュ)を勤める松本綾さん。ホテルのコンシェルジュなどと違い、相談を受けるだけでなく、お客さまの盛り付けのお手伝い、試食のお薦めなどもこなして、さらに店内での調理作業に従事する。本当にお客さまのお役に立ちます。

ユーコープは湘南辻堂駅前店でも出来たての惣菜とスイーツを多種類用意してお客さまのニーズに応える。通常でも競合店に負けない価格に設定しているが、平日には1g1円のランチバイキングの実施、カレーバー・スープバーは毎日昼の時間帯に展開など売場に刺激を与える。こうした新しいサービスに慣れていないお客さまを手伝うのが“総菜コンシェルジュ”。

ミアクチーナはイタリア語で私の台所という意味で、ユーコープの大型店のブランド。ミアクチーナ湘南辻堂駅前店は適量パックなど駅前ならではの利用者ニーズに応え、惣菜では地域で一番のおいしさと飽きのこない惣菜の品揃えを目指す。

価格、味プラスαで競合している他店との差別化を狙う。コンシェルジュは惣菜を使ったメニューを提案し、アレルゲン情報、原料の産地情報なども商品部と密な連携をとっている。現状は惣菜部門のチーフ、サブチーフ、チーフパートを中心に交代で担当。いずれはほかの職員、パートも担当できるようにする。

松本さんによるとお客さまからの質問は一日3件から4件と少ない。「産地はどこ?」「本当にできたて?」などだ。お客さまは店内加工の意味もコンシェルジュとのつきあい方もよく分かっていない。質問や相談の内容は店内だけでなく、ユーコープ全体で共有化して惣菜の売りの改善につなげる。

松本さんは日本惣菜協会のデリカアドバイザーの試験を秋にも受けるという。

頑張れ、松本さん。お客さまやお店と一緒にステップアップだ。

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