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生協特集

区切り線

コープあいづ 組合員の生活と心を守る 価格訴求店舗 酒蔵の外観も保持

生鮮でも冷蔵せずに販売してコスト削減の画像生鮮でも冷蔵せずに販売、コスト削減につなげる
特売商品を陳列画像特売商品を陳列して、お得感を訴える

コープあいづは運営している8店舗すべてを実質、価格訴求型の店舗にする。北関東のような競合の激しさもあるが、地域の経済的な基盤が揺らいでいる中で低価格路線によって組合員の生活を守る道を選んだのだ。また、経営環境が厳しいなかでも会津地域で伝統ある酒蔵の外観を保存し、町並みと組合員の心も守る。

会津若松市と喜多方市は歴史のある地域だが、情報通信技術(IT)関連企業の城下町となっていて、IT市場の動向で経済環境が変化する。2008年のリーマン・ショック、半導体不況などの影響が出て地域経済も冷え込んだ。

コープあいづの店舗事業も減少の状態になった。店舗事業が赤字の他の生協は宅配事業の黒字でカバーしているが、コープあいづは店舗事業が中心で赤字のまま放置しておけない。組合員の生活を守るためにも、価格訴求型の店舗に順次切り替えていく方針を打ち出し09年に既存の店舗をリニューアルオープン。順次拡大し、全店が切り替わる。

価格訴求型にするために物件費と人件費の合計である販売管理費にまず着手。従業者給与のベースアップなどを一時凍結。「組合員の生活も苦しい」と説得した。青果物の冷蔵用ショーケースも減らした。傷みやすい葉物野菜はそのままだが、日持ちする野菜は常温での売場にした。商品も絞り込み、生鮮魚介類も品目を減らし、高級魚は注文で提供する。水産、加工の卸売業とも迅速に連絡できる体制にして、仕入れ担当が調達、陳列するかどうかを判断する。魚介類では従来に比べて3割程度安く提供できるようにした。

組合員1人当たりの利用高も増えているわけではないが、価格訴求型の店舗にすることで組合員が増え、「若い夫婦が最低出資金の5000円を握りしめて組合員になる手続きをしているのを見たときには、本当にうれしかった」という。

LEDランプなどの導入などコストを下げる方法を検討中だが、地域経済の中核となっているIT関連企業でもリストラが始まり、消費税の増税などまだまだ逆風が予想されている。

コープあいづの改革は続く。


・会津の銘酒を復活 町並み保存、酒造り再開


会州一酒造の酒蔵画像外観を残した会州一酒造の酒蔵。内部は改装した
酒蔵の画像一部だが、酒蔵も残した。酒造りも行われている

コープあいづは会津の銘酒、会州一(かいしゅういち)と町並みを守った。NHKの大河ドラマで有名になった会津松平家藩祖の保科正之が会津藩に着任した寛永年間に創業した会州一酒造は06年に廃業に追い込まれ、土地もコープあいづに売却したが、「町並みを残してほしい」という市民の意見を聞き、外観の一部を保存、酒蔵も一部だが、酒造りを再開した。地域とのつながりを重視した。

会州一酒造は360年以上の伝統があり、会津藩領内の酒蔵取締役も代々勤めてきた。だが、副業のホテル経営に失敗し、資金繰りのための担保となっていた土地が競売にかけられ、新たな店舗物件を探していたコープあいづが落札した。会州一酒造は廃業に追い込まれた。

コープあいづには市民から「伝統ある町並みを残してほしい」と要望があり、設計などを変更し、11のうち九つの蔵を撤去した。06年には新店舗を開店した。

蔵の外観は残したが、土産物店、喫茶店などに加えて、集会場、貸会議室として改装。その費用は地方自治体の支援で半分ほどまかなった。

建物だけでなく、会州一という、品評会でも高い評価を受けている銘酒を次代につなげた。コープあいづは酒蔵の元の持ち主に酒造りの再開を求め、一つの蔵を貸し出し、資材購入も支援した。一部だが酒造りのための従業員も戻り、07年末から出荷開始。

コープあいづは会州一の頒布会を発足、会員を募り、地元での消費拡大を続けた。さらに各地の生協にも会州一紹介し、全国でも消費を増やし続けている。

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